インテリアを活かす ホームファブリックのスタイリング術
カーテン・絨毯などが並ぶコーナーで足を止めた、風間ゆみえさん。まるでスタイリングする洋服を選ぶように、「これ可愛いね」と声を掛けながら一枚一枚手に取り、質感を確かめていました。面で柄や生地を見せ、インテリアの印象を変えるホームファブリックは、洋服に通じるものがあるようです。そこで「これまで相当な量を買った」という風間さんに、インテリアコーディネート方法を教えていただきました。
これ欲しい! 風間ゆみえセレクトアイテム
「オールドギャッベ」
ギャッベは、南ペルシャの遊牧民が長い歴史と伝統を受け継ぎ織り続けてきた絨毯です。下絵がなく、即興で織り上げていくため、ひとつひとつの柄にその時々の想いが込められています。強さや権威を象徴する「ライオン」はギャッベでも特に人気のモチーフです。
カーテン 「MM5936/ピンパーネル」
日本の住宅は白壁が多いのでカーテンは無地を選びたくなりますが、柄を入れるだけで、部屋の雰囲気ががらりと変わります。私個人としては、無地ならグリーン、エンジなど濃色で厚手のカーテンが好みです。柄で選ぶなら、シックな印象の『ピンパーネル』を部屋のアクセントに差したいですね。
『ピンパーネル』は、元々ウィリアム・モリスの描いた壁紙のオリジナルデザインで、左右対称に渦巻く植物(ルリハコベ)の柄が特徴的です。デザインの自然な柔らかさとレリーフのようなイメージを、「織り」による繊細な凹凸のグラデーションで表現しています。
柄を差すときは
カーテン「前」の空間で遊ぶ
――家同士の間隔が狭い日本では、カーテンが欠かせません。風間さんならどのようにカーテンを選びますか。
日本の住宅は白壁が多いので、カーテンは無難にベージュや白を選ぶ人が多いですよね。でも、無地ならアクセントカラー、もしくは柄が入ったものを差すだけで、部屋の印象が変わります。実際に、自分の家に入れるとなると、悩みますけどね。私なら、フォトジェニックなものに目がないので、色気のあるパターンを選ぶかな。ウィリアム・モリスのレモン柄のイエローは素敵ですね。
――柄のついたカーテンは素敵ですけど、ハードルが高いように思います。
なかなか冒険しづらいですよね。「シンプルな空間のポイントに」と思って柄のカーテンだけを入れると浮いてしまいます。だからカーテンの模様替えに合わせて、周りを飾り付けしてみると良いかもしれません。柄と似たような雰囲気の絵を飾る、植物を置く、ランプシェードのついた照明を置くとか。カーテンの手前に小物を置くと、柄となじむので、空間がまとまります。
反対に無地のシンプルなカーテンを合わせるなら、周りはシンプルにまとめましょう。白壁になじませつつ、少し変わった雰囲気にしたかったら、カーテンではなくて、ファブリックやウッドのブラインドにするのもおすすめです。同じベージュでも素敵に変身しますよ。
――なるほど。自宅のカーテンの相談にも乗ってほしいです(笑)
ディレクターを務めたファッションブランドの撮影では、よくカーテンを現場に持っていきました。相当数持っていたので、見立てることはできると思います。大塚家具さんでカーテンのオーダー会があったら、アドバイザーとして参加したいですね(笑)
部屋の雰囲気に寄り添う
絨毯の選び方
――絨毯やラグはどのように選べば良いのでしょうか。
カーテンと同じように、無地でインテリアになじませるのも良いですし、反対に絨毯から、部屋のコーディネートを考えるのも楽しそう。今日見つけた、珍しいオリエンタルな花柄の絨毯に合わせて、シノワズリな雰囲気でインテリアをそろえてみるとか。これだけの数を見られる店舗って珍しいから、絨毯を見つけたい方は有明ショールームがおすすめですね。
――ペルシャ絨毯にも詳しかったですね。
これまでの人生で、結構な量の絨毯を買っていますから……(笑) 家によって内装は変わるので、引越しのたびに買い換えてきました。この年末も、アトリエを兼ねていた自宅を引っ越したので、新居のリビングにはスイスの「FISBA」の絨毯 を購入しました。
――新居はどのような雰囲気ですか。
新居は、青みがかったグレーのぬり壁に、白木の床で、ポイントに黒のアイアンが入っていて、シンプルながらシックです。リビングは、前のオーナーさんが残していった、グレーの厚手のリネンカーテンをそのまま使用しています。部屋の一角には黒いピアノがあり、既にモダンな雰囲気に仕上がっていました。かなり悩んだのですが、部屋のバランスをとって、全体をモノトーンで揃えようかなと。白いファブリックの1人掛けと2人掛けのソファを新しく迎えた後、絨毯を選びました。
――どのような絨毯を選んだのでしょうか。
私は強い色、濃い色が好きなんですけど、ショールームで見たFISBAのホワイトがすごくきれいだったので……。同じ空間内に、違うテクスチャーのホワイトが点在していたら可愛いと思って、その白い絨毯を購入しました。あ、でも白いソファに、思い切って赤い絨毯を合わせるのも可愛いかなぁ……。秋冬になったらやってみようかな。
大切に使ったものは次のヒトへ
モノは循環して生まれ変わっていく
――お話を聞いていると絨毯やカーテンをかなりお持ちのようですね。
そうですね(笑) カーテンやクッションなど、ファブリックが大好きでどんどん買ってしまうので、前は倉庫が常に満杯でした。今は、もう友人たちに譲ってしまいましたけど。
――マットレスもそうでしたが、ものを捨てるよりも「譲る」ほうが多いのでしょうか。
そうですね。家族や友人に譲るのもありますが、リトルショップ(※)やフリマなどで、次のユーザーさんに向けて販売もしています。私が神経質で、丁寧に使っていたので、ものはキレイですよ(笑) ブランドのものや上質で良いものは、品位を下げないためにも、きちんとした値段でお譲りしています。
服も、インテリアも1~2年使っていなくて、寝かしておくのならば、それを気に入ってくれる人に譲ったほうが、新たな幸せが生まれるかなと思って、お譲りしています。
――「新たな幸せが生まれる」とはどういうことでしょうか。
新しい服を着ると、なんだか気分が変わりますよね。この場合、新しい服というのは「新品」ではなく、「その人との新しい関係性が始まる服」という意味です。私との関係の中では古くなってしまった服でも、次の人の手に渡れば、今度はその人と組み合わさることで、新しいスタイリングが生まれます。すると服自体もリフレッシュして、生まれ変わると思うんです。でも譲った服を、その人がもっと可愛く着こなしていたら「可愛い~!やっぱり返して~!」ってなっちゃうかも(笑)
※風間ゆみえさんのオフィシャルサイト内にある、オンラインショップ名
連載シリーズ
風間ゆみえ スタイリスト、ファッションディレクター、ブランドアドバイザー、AMPP認定植物療法士
ファッションの枠にとらわれず、女性のライフスタイル全般をプロデュース。生き方、フィロソフィなど、生み出す世界観そのものが、幅広い世代の女性を魅了する。近年は植物療法士やフランス植物療法普及医学協会認定のメディカルフィトテラピストとしても活動中。著書に『LIKE A PRETTY WOMAN』、『GLAMOROUS HAWAII』(講談社)、『LADY IN RED』(扶桑社)がある。
ライオン柄のギャッベはとにかく目を惹きますね。自宅に入れるなら玄関や、寝室でベッドの足元にいれると可愛いかも。インテリアはフランスのアパルトマン風にそろえるとマッチしそうですね。同じライオン柄でも織り子さんによって赤が強くコントラストが映えるものや、表情が可愛らしいものなど、雰囲気が違って迷ってしまいます。